骨折した当時、嫁の人は、とても疲れていたのだった。
まぁなんというかこれまでの人生を総ざらいするような連載が、2019年いっぱいで終わったわけだが、その代償がいろいろとあった。
一晩中かけて執筆しているので、深夜に空腹になって、ともかくお菓子で空腹を埋めていた。
鈴木が自分用に買っておいたお菓子がいつのまにか消えていたこともしばしばだった。
それで嫁の人の体重は、数年前の1.5倍になった(自分でTwitterで書いてたからここで書いても大丈夫と思う)。
睡眠時間数時間、仕事前の鈴木に文句を言われながら起き上がることもしばしば。
明らかに、体力が落ちていた。
あとは虫歯。明け方に倒れ込むように眠るので、歯が磨けないことが結構あった。
まちがいなく悪くなっている歯が何本もあるはずだった。
他にも、息子マンの保育園の役員やら、運営法人の移管やら、各種医療機関や療育機関への送迎やら、様々な人間関係やら…。
同時に世の中は新型コロナ問題一色、万が一のために、ともかくいろいろな家族の食糧を買い込む。マスクを探しに何店舗も自転車で回る。
精神的にかなり疲弊していたし、夫婦で小さなことで険悪になる、ということも増えていた。
そんな中で、歯の治療をしている間に、次から次に神経までやられている歯が見つかって、歯医者に通いまくっていたし、歯が痛くない日がなかったようだ。
8日には息子マンが「お腹が痛い」と38.5度の発熱。一日で熱は下がったけれど、2週間に1度のペースで発熱している。これも心配だ。
さらには、嫁の人が生まれて初めて受けた人間ドックで、わざわざ呼び出し連絡が来たのが、9日(大したことなかったら普通呼ばれない)。
11日水曜日に結果を聞くと、持病の婦人科系の病気と生理中の人間ドックで数値が上がっている可能性があるけれども、要精密検査。
即日、紹介された婦人科クリニックに行き(その時も鈴木が早退して息子マンの面倒を見てた)、エコー検査と血液検査。エコーで問題ないけれど、翌週18日に血液検査の結果を聞きに来るよう指示。
その夜に、息子マンが黄色と白の下痢をする、と、そういう状態で、12日に小児科に向かったのだった。
その帰り、家の横で骨折。今考えると、まぁ本当に疲れていたのだと思う。
道路わきで倒れなくてよかった。車にひかれなくてよかった。
まぁ、ガッツリ骨折してるわけですが。
3月13日 嫁の人、入院
自分の睡眠時間3時間くらいで起き出し、嫁の人と息子マンを起こす。
今のところ、朝イチで息子マンも連れて3人で病院に行く予定ではあるが…。
鈴木が息子マンを保育園に送って帰って来てから病院に行くのでは、受付が遅くなってしまう。
でも、四歳児を病院に何時間もウロウロさせるのも考えものだし…。
支度をしながら、嫁の人が一計を思いつく。
嫁「タクシーで保育園の近くでまずキンちゃんを下ろして、保育園に預けてすぐに病院に向かえば?」
それなら…行けるか!?
ということで、事前に嫁の人が園に電話し、状況を説明。
快諾してもらって、タクシーを呼ぶ。
息「今日、保育園行かない?(彼は基本あまり保育園には行きたくない)」
嫁「今日は特別だよ!タクシーに乗っていくよ?」
息「やったぁ!!」
鈴木はとんだ策士を嫁に持ったものである。
家族3人でタクシーに乗り込もうとしたところで、ご近所の家族3人(家族構成が鈴木家と全く同じ)とばったり遭遇。
状況を説明し、「いつでもなんでも言ってくださいね!」のお言葉をいただく。
昨夜パッキングをした入院セット一式を持ち、タクシーに乗り、保育園前へ。
今日は卒園式でみんなバタバタ、また偶然に嫁の人のママ親友とその息子くんに遭遇。
「うえー!どうしたのー!」
まぁそれはビビりますわな…。いきなりタクシーの中で松葉杖持ってんだもんな。
ママ親友の息子くんは卒園式なのでめっちゃおめかししててカッコ良かった。
鈴木が息子マンを連れて園に入ろうとすると、息子マンが
息「ママも〜!ママも行く〜!!」
いやいやいや、ママ動けませんて!
玄関でしゃがみこみ、泣き出す息子マン。そこにやってくるベテラン担任保育士さん。
「もう、あとはこっちでやっとくから。ママ大変だね。パパも大変だけど、頑張ってね。」
鈴木、泣いていいっすか…。
ともかく礼をしてタクシーに乗り込み、一路病院へ。
途中で、電動自転車の前カゴに一人、後ろカゴに一人、そしておんぶ紐に赤ちゃん一人括って移動中のお父さんが。
嫁「あのお父さん、気合い入ってるね…。」
鈴「あの状態でコケないでね…。気をつけてね…。」
タクシーの中から応援電波を送る鈴木夫妻であった。
というか、マジで嫁の人が車道でコケなかったのが不幸中の幸いだったと改めて再確認。
タクシーが病院に到着、この時点で診療開始から5分くらい。
嫁の人は松葉杖で整形外科まで移動、鈴木は診療受付などを済ませる。
ここからの待ちが長い…。
新型コロナの影響で多少患者が少なくなってるとは思うけど、それでもかなりの待ち。
「なんだよ!マスク売ってないのかよ!俺もうマスクねえよ!」
とか、職員の人に謎に絡むおじさんもいて、ホントお疲れ様です…。
気づくと、整形外科の壁に張り紙が。
<ただいま、病床数が足りておりません。入院•手術をしばらくお待ちいただく可能性があります>
鈴「今日、入院出来なかったらどうする…。
嫁「いやそれはキツいでしょ…。どこか別のところ紹介してもらう?
鈴「昨日、もう一ヶ所の病院も紹介してもらえば良かった…。クソ…クソッ…クソッ…。
ここまで来て病院をたらい回しにされる可能性に怯え、むちゃくちゃイライラしてしまう。
しかし、まずはここで診てもらわないと話にならん。
ともかく待つ。
やっと呼ばれて診察室へ。40代中盤くらいの、かなり仕事が出来そうなちょっと体育会系の先生。
医「今こんなもんなの?あ、でもこれは去年の画像ね…。あー、今これね。はいはい…。まずこっちでレントゲンとCT撮りましょうか」
というわけで、こちらでもレントゲン撮影。これもまた待つ。
この辺りから、嫁の人は車椅子を利用。ちょっと移動がラクになる。
ただ、鈴木は入院セット一式を常に抱えた状態なのでバタバタしてるし重たい。
これで入院出来なかったらキツイぞ…。
レントゲンやCTを待ちながら、周りの患者さんを見ている。
あまり重い怪我がなさそうな人から、ほとんど寝たきりの高齢者まで。
なんか、怪我も病気もないって、ありがてえことだよな…。俺が頑張らねば…。
一通り撮影して、再診察。
医「脱臼状態になってるので、そこをまず直します。あとは、血栓あるの?」
そうなのです。嫁の人は、坑リン脂質抗体症候群という持病があるのです。
基本的には妊娠時に血栓が出来やすく、流産しやすいわけですが、日常的には血液の流れをよくする薬を飲んでいる。
この要素が手術の時にどう出るか、主治医の先生は非常に気にしているらしい。
この時点で、鈴木夫婦としては、この先生に対する信頼感がかなり増した。
生命に関わるリスクをちゃんと知ってくれてる…。この病院で入院、手術しちゃいたいな…。
ともかくまずは、脱臼を治す処置のために処置室へ。
主治医の先生が、嫁の人の骨折足をグニグニとして、もう一度CT撮影。
嫁の人いわく、思ってたより激しくなくて痛くなかったらしい。
やはり…こやつ出来るぞ…。マジ入院させてくれよ…。
もう一度、整形外科前に戻り、診察待ち。
この時点で、昼の12時過ぎ。病院到着から3時間ほど経過。
しかも、さっき主治医がエレベーター乗ってどっか行ったんですけど!
これはアレだ…きっと昼飯タイムだ…。
20分ほどして、主治医がささーっと戻ってきたところで、嫁の人が呼ばれる。
たぶんホントに昼飯食べてましたねw
や、午後の診察開始前にちゃんと栄養補給大事なので全然良いんすけど!
主治医からは現状説明。脱臼は改善されてるけど、亜脱臼状態なのは変わらない。
プレートを入れて折れた部分を固定、中央部の割れた部分が多少厄介だけれど、それほど難しいケースではない。
あとは、腫れが引かないと手術が出来ないので、数日の猶予は必要。
医「今のところ、18日の手術予定で、入院ということでいいですか?」
食い気味に「お願いします!!!」と声を揃える。
やった…今日入院出来るぞ…!
嫁の人は舞い上がり「あのっ!先生が手術してくれるんですかっ?!」とがっついておりました。
そこからは入院手続き開始。嫁の人は入院前の各種測定やらなんやら。
鈴木は誓約書や契約書や看護情報カードやら保証金の説明やら、なんやらかんやら書類作業。
近所の整形外科で借りた松葉杖も受け取る。なる早で返さねばならない。
あとは限度額適用認定証なるものを役所で発行してもらうと、入院費用がかなり減免されるという説明もしてもらう。
鈴木と嫁、おたがいに一通りの作業が終わり、病棟へ移動。
病棟入り口には、新型コロナウイルス対策のため、面会禁止の文字が。
そう、新型コロナのために、基本的に病床で面会してはいけないことになっているのだ。
嫁の人は病室へ。看護師さんにやっと荷物を託せた。鈴木は、ここでお待ちくださいと言われた待ち合いスペースのソファで待つ。
隣に来た面会札を下げた中年夫婦のところに、地域のワーカーさんがやってきて、何やら打ち合わせが始まってしまう。
や、他人が横にいていいんすかね…。めっちゃおばあちゃんの容態聞こえてますけども…。
仕方ないので自分からソファを移動、したところに担当看護師さんが来てくれて、さらなる書類作業。
この看護師さんがかわいい小動物感のある若手で高まりましたね。
入院保証金が足りないので、この辺りで下ろせるところを聞くと、ちょっと歩くみたい。
看「院内にATMがなくてすみません…。
いやいやいいんです!歩けますんで!
書類作業終わったところで、入院時なので病室で多少打ち合わせしていいことに。
嫁「館内着を借りることになったから、着替えは全部要らないんだ。ゴメンね。」
用意周到過ぎて結局無駄になること、ありますよね…。まぁそのための用意でもあるのか。
あとは嫁の人の財布に入った分と、万が一のためにポーチに準備してた分、そして昨日鈴木が下ろした分を合わせれば…入院保証金になる!松葉づえ持ったままATM行って戻らなくて済むぞ!
とりあえず自分がやるべき事を確認。
限度額適用認定証の発行、松葉杖の返却、嫁の人が退院してからもしばらく保育園の送迎が難しくなるので、子ども家庭支援センターに相談、再検査結果を郵送か代理で知ることが出来るかの確認、実家への連絡、そして、息子マン先生を保育園に迎えに行かねば。
ざっくり確認し、あまり長居するのもなんなのでサッサと退室。
帰り際、ナースセンター前で看護師さんに挨拶。
担当の方と、リーダーらしき方に「お父さん、大変だけど頑張ってくださいね!」と激励していただく。
ううう、泣いていいすかね…。
病院受付に戻り、保証金の払い込み。限度額証明書を発行するように再確認される。全然額が変わってくるみたい。
病院を出る、到着してから約6時間。
ここから1時間半で保育園のお迎え、それまでにどれだけこなせるのか…。
待ちメインのタスクから、一転してタイムアタックに移行である。
病院を出てからすぐに昼飯を食べる手もあったけど、ともかく今は動かなければ…。
松葉杖を持ったまま昼めし食うのも、なんだか気分が良くないし、忘れたら大変だし。
補償金を払い込んで財布がほぼ空なので、コンビニATMで出金。
そこそこ病院から歩いたので、ここからまた戻る羽目にならなくてよかった…。
最寄り駅近くのパン屋でサンドイッチを購入、電車待ちのホームベンチで食べる。
浮遊コロナちゃんが怖いが、そんなことも言ってられないくらい時間がないのと空腹が酷い。
電車で移動して、役所の最寄り駅まで。また駅近くのパン屋に。腹減ってしゃーない。
役所まで着くと、なぜかものすごい混雑ぶり。いや、年度末だからわかるけども…。
この空間とか、マジでコロナちゃんうようよしてんじゃないの?とかちょっと不安になる。
とか言いながら順番待ちの番号札を取り、役所の外に出て一息。
さっき買ったパンをほおばる。混雑した役所の中で食うよりはマシだろ…。
完食して混雑した役所の待合スペースに戻る。こういうのこそテレ申請したいんだけど!
とか言ってるうちに自分の番に。すぐに発行してもらえて拍子抜け。
役所の職員のお姉さんに「骨折で入院は結構費用が掛かりますよね。絶対に限度額適用認定証、あった方がいいですよね」と言ってもらえる。
いろんなことが起きてますが、基本的に関わってくれる人は親切でありがたい。
役所を出て、また移動。もちろん松葉杖を持ったまま。
使う必要はまるでないのに、ずっと松葉杖を持ってるのも、なんだかおかしな感じ。
でも、これをずっと使わないと移動できないの、しんどいよなぁ…。
家の近所の整形外科に着いて、松葉杖を返し、貸与補償金を返却してもらう。
あとは、家に帰って、各所に電話して、息子マンを迎えに行かねば。
7時間半ぶりに帰宅した家だが、本当に「帰ってきた!」という感じがする。
しかしここからが俺たちの本当の闘いだ。
まずは、婦人科クリニックに電話。
嫁の人の再検査結果を自分が聞きに行くか、郵送で結果を教えてもらうか出来ないか、という問い合わせ。
事情を話すと、受付の人は「主治医に聞いてみますね」と。ちょっと待ってから
「数値は以前に検査した時とほとんど変わらないので、ご本人様の足が治ったらまたいらしてください、とのことです」と。
この時の、この時の安堵感は、本当に筆舌に尽くしがたい。
骨折した状態でがんの疑いが強まったりしたら、もう本当にどうするんだよ…と思っていたので。
次に、世話になっている(Chaccoの「まっとうな親になりたい」に登場する、めちゃめちゃ頼りになる保健師さん)に連絡。
事情を話し、送迎などの福祉サポートが利用できないかを問い合わせ。
すぐに担当から連絡が行くように手配してくれる。本当にこの方、鈴木家の救世主よ…。
以上をLINEで嫁の人にも報告。実家にも電話連絡すると、鈴木母は
「Chaccoさんが退院するまでうちにいなよ!そうしなよ!」と。
まぁそれはそれで大変なんですけども。でも有難いお言葉ではある。
そして息子マンのお迎えへ。
嫁の人が倒した電動自転車で、いざ向かうぜ保育園!マジで俺が倒れたらシャレならん…。
園に着くと、もう、保育士さんたちがみんな「どうだった?お父さん大変だね!」と声をかけてくれる。
担任のベテラン保育士さん曰く、息子マンはかなりイイ子で大人しくしてたらしい。周りの子よりも全然イイ子ちゃんだった、と。
たぶん、彼もなんとなく状況が分ってるんだよな…。
とりあえず、週末から実家に帰る予定であることを伝え、来週の途中で、通園をいつからにするかを連絡することに。
他の保育士さんには「骨折はいつか治りますから。私も何度もしてますから。日にち薬ですからね。お父さんが身体を壊さないでね」と何度も言われる。
帰り際には、通りかかった園長にも激励される。
や、ほんと、人に恵まれているんですよ…。
息子マンを引き取って、電動自転車でこけないように帰宅。
とりあえず、今日の大きなミッションは総計9時間ほどでコンプリート。長かった…。
息子マンにはHIKAKIN先生のスーパーマリオオデッセイ実況シリーズを見ていてもらい、鈴木は仕事関係の連絡をしまくる。
新型コロナ問題もあるし、全体的に先が見えなくなっていて、もうホント、何が何だかわからんが、とりあえず連絡はしておく。
夕飯はあまり食わず。もとから食べるものが限られてるけど、ウイルス性胃腸炎あけだし、バタバタだったし、仕方ないか…。
鈴木は、しばらく家を空ける可能性が高いので、冷蔵庫にあるものの消費モードに。
この日はヤバくなり始めたひき肉と豆腐で、超適当な麻婆豆腐作って食った。
豆板醤と焼肉のたれ(これもやばい感出てきてた)で作っても、なんとなく麻婆豆腐になるのが面白い。
まぁ玉ねぎ切ってぶち込んだのは、もうちょっと小さく切ればよかったけど。
夜遅くになってから息子マンがトイレに行くが、11日のように変色はしていないものの、結構な下痢。
これは息子マン先生も体調どうなるかわからんな…。先が見えん。
そして、ついにママについて聞いてきた。
「ママ、足が痛いの?切れちゃったの?」
そうなんだよ、足が痛くて、大怪我なんだ。骨が割れてしまって、病院にしばらくお泊りなんだよ。明日から、じいじばあばの家に、パパと二人でいかない?
「僕やだよ…。ママいないと寂しいよ…」
そうだよな。ママいなくてどこかに泊まったことなんて、ないもんな。ちなみに、転んだことは覚えてる?
「…覚えてないっ(笑)」
そのニヤニヤは、覚えてるけど、わざと言っているなw
しかし、彼にとってもショックな出来事だったのだろう。夜は、かなり密着して眠っていた。いや、キミも本当にお疲れさまだよ…。
この日はさすがに自分もぐっすり眠れた。さてしかし、明日からどうしよう…。