冗談の通じない子は読まないほうがいいよ!
■アキバにでも行けと彼女は言った。
「アキバにでも行け」と僕は彼女に言われた。
僕が人生で初めて会話した女性だった。
メンヘラで、プライド高くて。体重は75キロ越え。
35歳超えて童貞なんて信じられない。女性に幻想を抱かれても困る。
汚物をみるような目で、心底哀れむような目で、僕はそういわれた。
ぼきん、と僕の中で何かが折れる音がした。
そうか。一般人に幻想は求めてはいけないんだ。愛情なんて求めてはいけないんだ。
僕は有り余る自宅警備生活の残りを全てバイト面接に費やし、深夜勤と言われるようなシフトに入った。
そして、得た金のほとんどをヲタ活動に費やした。
そうか。やっぱり彼女のいった通りだった。とても簡単なことだったんだ。
それから、ヤマギワとか石丸を回るのがめんどくなった僕は、適当にアキバを徘徊した。
なるべく効率を上げるためには、集客の弱い子が良かった。
どう考えても無理がある女子高生や、その年でまだコスやるかという人妻や、愛とかとくに考え過ぎな頭が痛い腐女子。
みんな、簡単に僕と握手して、僕を大事にしてくれた。
僕は人間の弱い部分を知っていた。
自分がとても弱い人間だったから、どこをどう揺さぶれば心が揺れるのか熟知していた。
少し揺さぶり、よろけてこけそうになったところを、そっと優しくヲタ芸打ってあげればそれでよかった。
僕があのときや、あのときに、そうして貰いたかったことをロミオで表現すれば良いだけだった。
どんどん集客弱い子を効率的に回って、学習した。そのうち、大抵の子は手を振ってくれるようになった。
他人の承認欲求を満たすのはとても楽しかった。優しい人間になれた気がした。
CD買ってください。イベントのチケ買ってください。撮影会もやるんです。
僕は首を縦にふってがっついた。
最初はとても自分がひどい人間に思えて何度も何度もヨドのトイレで吐いた。
けれど、じきになれた。だってさ。アイドルに幻想を抱かないのも困るだろう?
えらいヲタには女の子もよってくる。ブログ運営も順調にいき、僕はますますひどいヲタになった。
あるとき、街で僕は彼女に再会した。
僕にアキバをすすめた女だ。
もうすぐ結婚をすると彼女は僕に話した。
色々話をしていたが、結局のところ、たくさんの男と付き合い、女を磨き、理想の男を手に入れたと言う成功譚だった。
妄想乙。
それから、僕は彼女をとても優しく受け止めてあげた。
彼女は僕を信用し、僕プロデュースでコスプレモデルを始めた。
ちょっと衣装代に困ってるんだと彼女がいうと、すぐにお金をあげた。
貯金が減ったけどこれでよかったと僕は思った。
夏と冬の祭典やらとしまえんのイベントに行くのが楽しかった。
彼女へあげるお金がなくなった。
彼女の似合わない八ル匕コスにも飽きてきたので、僕は彼女とさようならをすることにした。
行かないで下さい、嫌いにならないで下さい、コスパ行ってください、通院費も馬鹿にならな(ry
どうか、どうか。
彼女はそう言った。うーん、そうなのか。
僕は言った。
あのね、一般人に幻想や愛情を抱かれても困るんだよね。
誰かに認められたい?簡単なことだよね。
「アキバにでも行け」
元ネタこちら
ソープへ行けと彼女は言った。