韓国ガールズ・グループの究極オルタナティブ「QWER」を解読する

や、ここ数週間ぐらいは、QWERの「悩み中毒」中毒になってるんです。しばらく新曲を追えてなかったタイミングで、YOUTUBE見てたら練習動画が出てきて、これめちゃめちゃ良いな…。となったのです。

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おっ!と思った点としては、これ生で弾いてるよね?というのと、それでいて全編生演奏でなく、途中にドラムンっぽい完全に打ち込みのビートが入ったりと、楽曲自体のこなれたプロ感。そしてヴォーカルがめちゃめちゃよいなーというのもポイントでした。

で、いろいろ見てるうちに、「悩み中毒」がMelonチャートでトップ10に上ってきたり、ミニアルバム「MANITO」収録曲が全部チャートインしたり。

おもすれー!と思っていろいろ調べてたら、いつものごとく長大になってしまったのですが、以下4ポイントを押さえるとQWERと「悩み中毒」の解像度がかなり上がると思うので、しばしお付き合いください!

第5世代台風の目?! QWERを解読する4つのポイント

ポイント1 実は連綿と受け継がれていたバンドサウンド、バンド形態アイドル

ダンスミュージックの印象が強い韓国アイドルシーンでも、ロックサウンド、ギターサウンドを取り入れた楽曲は、これまでにもいろいろとありました。一番近い記憶だと、2023年Queendom PuzzleでカバーされたDAY6「time of our life」は本当に良かった。みるるんの声が合ってるんだよなー。

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もうほんとクラシックになってる少女時代「Way to go(ヒムネ)」も系譜の上流にあると思います。リリースが2009年、Geeのカップリング曲と書くとほんと歴史的。あと、MVのソシメンがめちゃ可愛い。まぁ15年経ってもみんな可愛いですが!

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QWERよりも相当ダーク目、ハード目ではありますが、ギターサウンドを前面に押し出した楽曲、ということで言えば、Dreamcatcherも印象的なグループ。「Good Night」は2017年の曲。

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あと、ガールズバンド形態もやってたと言えば、AOA(の派生グループAOAブラック)ですよね。「MOYA」は2013年の曲。ただ、バンド形式はメインというよりも、FTISLANDとCN BLUEのいるFNCのグループっていうことで、風味を取り入れたぐらいの印象でした。代表曲「Miniskirt」とか全然バンドじゃなかったし。

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個人的に思い入れがあるのは、やっぱりWonder Girlsのバンド形態。ワンガが2015年に「I Feel You」引っ提げてカムバした時はホントびっくりしました。2016年リリースのレゲエサウンド「Why so lonely」といい、今見ると本当に円熟味あって素晴らしい…。

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こうした流れを見ると、QWERは空前絶後の存在、というわけではなくて、ここに繋がる文脈がしっかりあることがわかります。同時に、ビジュアルとか曲調が、かなり日本のサブカルチャーを参照しているところとかは、かなりオリジナリティを感じるところです。

ポイント2 苦労人でおもしれー!元NMB48しよみんことイ・シヨンの半生

さてさて、QWERで印象的な歌声を聴かせてくれるのがイ・シヨン。この方、元NMB48初の外国人メンバーとして活動していた人なんですよ。NMB在籍時にも知ってたけど、しよみんと呼ばれてたことぐらいしか知らなかった、不覚…。

YOUTUBE企画として結成されたQWER。最後のメンバーとして加入したのがしよみんでした。この加入した時のインタビューというか、公園で駄弁ってる動画が最高で、しよみんかわいすぎなんですよ!! 

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で、しよみんのいろんな動画を見まくりまして、2018年12月の路上ライブから2023年10月にQWERとしてデビューするまでの怒涛の人生をまとめてみました。やー、でもさ、人生ってこういう感じでいろいろある時あるよね!

2018年12月

高校3年時に、ダンススクールの友人と路上ライブ。大学受験のために2回で解散。

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このころのことを話してる動画

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2019年 

大学受験、第一志望の芸術大学に合格するも、ヒールでこけて足首を粉砕骨折。通学が難しくなり休学。韓国の芸能事務所に所属し、大学を退学。

2020年 

所属した芸能事務所のデビュー計画が不発。寮で1月からNMB48が7期募集しているのを見つけ、応募。2次面接まで合格するも、コロナ禍で日本に入国できず、3次ダンス審査が受けられない状態に。

2021年

NMB48追加オーディション、晴れてメンバー入り。8月にお披露目、9月に舞台デビュー。

2022年1月

第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦に初参加 全体5位

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このタイミングで古家さんの番組に出演。

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2022年2月

2代目NMB48キャプテン小嶋花梨さんのYOUTUBE出演。信頼厚いなーという感じ。

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2023年3月 

第5回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦に参加。全体2位

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2023年5月 

インスタライブに後のQWERプロデューサー、YOUTUBERキムゲランが訪問

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2023年6月 

NMB48卒業を発表

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6月30日に「夢を信じて」歌唱動画アップ。

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2023年8月 

NMB48を卒業、直後にQWERの最終メンバーとして発表される。

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2023年 10月

QWERとしてデビュー。

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5年、正確に言えば4年10カ月で、路上でダンスカバーしてる女子高生が、大学に入学後にすぐ退学して外国でアイドルとしてデビューして歌唱力2位になって卒業して本国に戻ってきてガールズバンドのボーカルとして再デビューするという波乱万丈ぶり。コレ、そのうちドラマ化したほうがいいやつです!

あと、敬虔なクリスチャンの家で育ったから、結婚、出産に対して並々ならぬ思い入れがある、というのも、極端な少子化が大きな問題になっている韓国では独特なんだろうな、というのと、その思いからNMB48辞めると語るとか、いやホントおもしれー子ですよ!

メンバーの中で、自分がまず気になったのがしよみんだったし、それは多くの人にとってもそうじゃないかと思います。ともかく主人公属性がある人。この人がいることが、QWERの大きな強みであることは間違いないと思います。

ポイント3 韓国のオルタナアイドルシーンを支える配信者がメンバーに

QWERは結成とデビューに向けての過程をYOUTUBE番組で見せていくスタイルなんです。プロデューサーは亀仙人みたいなYOUTUBER、キム・ゲラン(キム・タマゴってことよね)。

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徐々にメンバーを集めていって、最初はラストアイドル Love Cocchiの西村 歩乃果さんをヴォーカルに迎えるつもりだった(というストーリー)ようです。西村さんが韓国で人気があるみたいなんですよね。韓国のファン向け動画とかもある。

で、しよみん以外のメンバー誰なんだ?と思ってちょっと調べたら、Twitchとかの配信者だったり、コスプレイヤーだったりするんですよ。韓国のレイヤー、グラドル、配信者をいろいろ掘ってた自分としては、ここもすごいポイントでした。

Q チョダン 1998年生まれ(現在25歳)

ドラマー、サブボーカル担当。QWERリーダー。元々はストリーマー、YOUTUBER。

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2023年1月配信のキムゲランPDによるウェブ番組、「ウマゲーム」にも出演。

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W マゼンタ 1997年生まれ(現在26歳)

ベース担当。元々はストリーマー、YOUTUBER、コスプレイヤー

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チーズフォンデュでペチペチされる動画がバズりまくったTastyHoon氏の動画にも出てた。めちゃめちゃネット人脈!

E HINA 2001年生まれ(現在23歳)

ギター担当。またの名をにゃんにょんにょんにゃん。元はコスプレイヤー。ウォニョンの姉と勘違いされたことがあるらしい。

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ドラムのチョダンとベースのマゼンタは、20代後半。しかも元々ストリーマーとかコスプレイヤーとして活動してた人たちなんですよ。10代前半から練習生を数年やって10代中盤でデビュー、それがアイドル適性年齢!みたいな従来的価値観とは、かなり異なるメンバーで構成されてるんです。

ちょっと谷間を強調してたりっていうのも、ホント従来型のアイドルとは違ったところから出てきてる。デビュー曲「DISCORD」のMVで肌色面積多めだったのも、出自的にはなるほど…という感じ。

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このメンバー編成が、外見だけではなく、楽器演奏できることも重要なポイントになっているのは、本当に面白い。

そして、チャートを爆走していても、音楽番組に出演しないのは、ここら辺のメンバーの、なんというかネットでやってく!という方向性があるのかも、とも思いました。やー、もしも1位獲ったら痛快だけど、音楽番組に出てなくてもヒットしてる、という現状が面白いのもあるし…。

あと、「悩み中毒」のMVを見てて、めちゃめちゃ二次元との合間感があるな…と思ってたのは、メンバーがリアル10代じゃないけど制服着てる、コスプレ感が高いからなんだろうな、と思い至りました。リアル10代感を追求するNJやアイリとは一線画してて面白いっすよね。

ポイント4 音楽面を支えるのが職人集団PRISMFILTER!

今回、作家陣について全然調べてなかったのですが、え、このグループの音楽面ってPRISMFILTERがプロデュース担当してるの?そんなん強すぎでしょ!!

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QWERは、感覚的な企画力を持つニューメディアコンテンツスタジオの3Yコーポレーションのタマゴプロダクションと、優れた音楽性を証明したミュージックパブリッシャーのPRISMFILTERが共同制作したグループだ。

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PRISMFILTERが作曲家集団なので、今回の作品にかかわってる人を軽く調べただけでも、以下のような感じになりました。や、そりゃいい曲書くわ。いいベース鳴るわ。

Elum(MANITO全曲参加)

IZ*ONE/SPACESHIP

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Kep1er/WA DA DA

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イ・ドンヒョク(「悩み中毒」作曲・編曲等 MANITO全曲参加)

Queendom Puzzle 「Weekend」,「Fightin!」カバー編曲

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PRISTIN/「Be the Star」,「WEE WOO」 fromis_9/「Glass Shoes」「DKDK」など多数楽曲でベース演奏

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ホン・フンギ(「悩み中毒」「Make Our Highlight」作曲「Free-Dumb」作曲編曲)

Queendom Puzzle 「time of our life」カバー編曲

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最後に、最初の方に貼ったQueendom PuzzleのDay6カバーがまた出てきましたね。そうなんですよ。記事を書くまで全く気付いてなかったんですが、PRISMFILTERの同じ人が関わってたんです。

Queendom Puzzleの作家陣としては、ビッグネームであるライアン・ジョンやKENZIEが取り上げられることが多かったですが、かなりPRISMFILTERも噛んでたんですね。や、もしかすると、Queendom Puzzleの時に、元NMB48のみるるんが歌声ハマってたところから、元NMB48のしよみんに繋がっていった可能性…。ゼロではないんじゃないかなあ。

さらに言えば、ズワンの成立にはPLEDISが欠かせなくて、そもそもPLEDIS楽曲は、かなりPRISMFILTERの手によるものが多かったことも考えると、QWERには、うっすらとPRODUCE48のDNAが流れているようにも思います。

異端者が世界を広げていく、QWERの炎はどこまで届くのか

QWERを理解する4ポイントとして、韓国のガールズバンド、ロックアイドル楽曲の歴史と、フロントを張るしよみんの波乱万丈、かなり異質なメンバー編成でありながら、楽曲はヒット曲連発のPRISMFILTERが担当していることを挙げました。

このほか、QWERというバンド名や、DISCORDという曲名が、かなりネット寄りであることもポイントでしょうし、韓国の若者の中で日本風テイストが流行していることも、大きなポイントになるでしょう。

ダンス・ボーカルグループが巨大化・肥大化しきった2024年に現れるべくして出現した究極のオルタナティブ・ガールズバンドというQWERの位置取り、本当に面白いと思います。

最後に、2024年4月24日の南ソウル大学学園祭でのライブの様子を貼っておきます。これがねー、マイクを全然拾ってない?ヴォーカルが全然音が出てない?なのに、なのに爆発的に熱くて、特に「悩み中毒」ラストのしよみんのダンスが鬼気迫るものがあるんですよ。FIESTA踊ってるックラ様ぐらい気合が入ってる。

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本当は、キム・ゲランも出演している、韓国の地下アイドル版未來少女みたいなサバ番「特戦!少女戦線」で日本のアイドル曲がカバーされまくってることも触れたかったんだけど、マジできりがないのでこれくらいにします。

や、でもね、同じことが繰り返されていくだけでは無理が生じてくるというか、エントロピーが上昇してしまうと思うんですよ。どこかで異質な存在が、傷をつけ、穴を開けてくれることが、さらなる変化をもたらすのは、必然であり、必要なのだと思います。そうじゃなきゃ絶滅しちまうよ!

というわけで、なんかウェブドラマみたいなのも上がったので、ちょいちょいQWERの動向も気にしたいと思っております。やー、しよみんの眼鏡姿マジ可愛いな!

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