劇団ハーベストとは、いったいなんなのか? 『劇団ハーベスト大収穫祭』レポ

劇団ハーベスト、現メンバーが全員卒団!

というわけで、現体制の最終イベントとなる、『劇団ハーベスト大収穫祭』にお邪魔してきました。イベントは2パートありまして、前半が演劇、後半がトークショウという構成です。決して広くないアトリエファンファーレ高円寺は、ぎっちぎちの満員。最終イベントの千秋楽、最後の公演ですもんね…。でも、なんか、雰囲気が湿っぽくないなぁという印象なんですよね。

現メンバー最後の作品は、衝撃の「ゴーイングマイウェイ」

現メンバーによる、最後の作品が「ゴーイングマイウェイ」という短編。脚本は、メンバーの川畑光瑠さんと、高橋紗良さん。のちのトークで明らかになるのですが、この作品のほとんどを川畑さんが、そしてラスト部分を高橋さんが担当していたようです。

ストーリーは、男性アイドルのファンたちが、ニューカレドニアでの生誕イベントに向かうはずの空港で、謎の飛行機爆破事件に巻き込まれ…というもの。やー、これが、びっくりした。すごい率直に言うと、これ大丈夫?と思っておりました(笑)。

いや、だって、めちゃめちゃ物騒な話なんですよ。基本はコメディタッチなんです。でも、台風で空港が閉鎖されて大変だったニュースもあったばかりだし、飛行機が爆破されてるから、犠牲者とかもいっぱい出てるはずだし…。これが現メンバーの最終作品なの?途中からボカンボカン爆発しまくりますからね。普通に衝撃なんですよ。

粗削りな作品の中に見える、懐かしさの正体

いろいろ考えつつ見ていて、でも、これはこれで、すごく懐かしい感じにもなったんです。粗削りな作品で、これでいいの?って心配になって、でも、若さゆえの勢いがあって。この感じって、完全に、冬の特別公演でやってた、自作脚本短編を思い出します。

今回の「ゴーイングマイウェイ」も冬の特別公演の中の一本、として見てみると、道具立ての多彩さ、テーマの同時代性、伏線の張り方、どれも脚本を担当した川畑さんの、今現在の一生懸命という感じがする。彼女のキュートで愛すべきキャラクターが垣間見えるんです。さらに言えば、彼女たち、ミステリモノもやりたいって言っていた気がします。最後の最後に、(いちおう)ミステリ出来たんだなー。

ストーリーの最後に、「という話をやりたいんだよね」と川畑さんが語るというメタ構造に落とし込まれて、観客全員が思ってた「これ、最後の作品にするの?!」が望月さんによって言語化されました。ここではかなりの笑いが取れてましたね。

そこから喧々諤々、脚本について話し合う劇団ハーベストの現メンバー。ラストに川畑さんが「もう…大好き!」と叫んで終わります。先ほど触れたように、このパートは、この数年ずっと脚本を書くことと向き合ってきた高橋さん担当だったようです。

このパート、あるとないとでは大違いです。見ながら、やるじゃないか!と思いました。これまでは脚本家の方に手直しをされて特別公演に仕上げていた高さら先生が、今度は川畑脚本を手直しする側になったわけです。そう考えると、ものすごく、成長したなぁ、収穫だなぁ、とも思えます。

普段着で卒団していく、そこが頼もしい

ゴーイングマイウェイ」の後には、劇団ハーベストの歴史を振り返るトークショウ。当時の写真や映像を交えながら、当時の秘話が明かされます。青山事変のエピソード、最高でしたね。ホント青山さん大好きです(笑)。

そんなトークショウも終わって、メンバーそれぞれが、泣いたり、泣かなかったりしながら最後の挨拶をします。それが終わると、みんなでそそくさと物販の準備をするのが、めちゃくちゃ通常営業という感じ。なんだか頼もしくすらありました。

帰りの電車の中でイベントを振り返ってみると、なんか、正直に言うと全然悲しくなかったんですよ。いちばんウグッと来たのが、過去の振り返り動画に入るところでかかったのが、第8回公演「ミラクル8」の主題歌「ピース!」だったところ。元メンバーの広瀬咲楽さん作の名曲で、個人的に一番印象に残っている公演で。千秋楽のラスト、メンバーみんなで歌ってるの、ほんと感慨深かったよな…。

あなたたちがいる限り、劇団ハーベストは、終わっておりません

 

そしてイベントから一日たって、振り返ってみて思うのは…。劇団ハーベスト、終わってないんだなっていうことでした。やはりこれは、現メンバーの全員卒団による活動休止なんです。

現実的に再始動があるかどうかは別の話かもしれません。でも、まだ、どこかに「劇団ハーベスト」は、間違いなくあるなあという感じがするんです。

そしてこの感じ、学校っぽいよな、とも思いました。みんないつか卒業したり、退学したりはするけど、でも、学校は残っている、みたいな。もちろん戻りたくない人もいますし、たまに戻って行って、先生たちの顔を見て帰っていく子もいますよね。

そういえば、はじめて劇団ハーベストを取材した時に、マネージャーさんが担任の先生で、中村公平さんが教科指導の先生、みたいな感じだなぁと思った覚えがあります。もちろん授業教科は演劇ばかりなので、公平さんも担任のようなものなのですが(笑)。

で、当日パンフレットに、詳細な年表があったのですが、劇団ハーベストの歴代メンバーって、97~98年生まれが多いんです。彼女たちが中学1年生である13歳で出会って、中学2年生の14歳から公演を始めて、大学3年、就職活動が始まるあたりの21歳で卒団するわけです。これもうホント学校ですよ。

そう考えると、劇団ハーベストって中高大一貫性の、女子校だったのか…。や、そしたら、そしたらまぁ最後の2本は女子学生を描いた「DOLL」と「肉体改造クラブ・女子高生版」になりますよ。

あの二本はやっぱり、彼女たち自身が、演劇という形を通して語ってくれた、劇団ハーベストで過ごした日々であり、その毎日が死んでいき、そして新しく生まれ変わる、という意味だったのかもしれません。

さてさて、『大収穫祭』イベントが終わって、全員が卒団。ここからは、それぞれがそれぞれの女優業を続けていくわけです。

ブログに文章として書くにあたって「ここから彼女達は戦友でもありライバルでもある」みたいなことを書こうとしたんだけど、なんか、この表現だと、ちょっと個人的には違和感がありました。

もし劇団ハーベストの出身者たちが、同じオーディションを受けても、そこで、「ライバル!」というよりも「一緒にやろう!頑張ろう!」みたいな、同級生みたいな、同じ釜の飯を食った間柄、みたいな雰囲気になりそうだなーって気がするんです。

そして、以前にも書きましたが、劇団ハーベストに在籍したすべてのメンバーたちには、「ハーベストらしさ」みたいなものが刻み込まれているように思います。

つまり、劇団ハーベストは、彼女たちが、女優をしている限り、いや、女優をしていなくたって、どこかで一人の人間として生きている限り、この世のどこかにあるんだよな、と思うんです。

最後まで残ったメンバーが、途中で抜けて行ったメンバーが、これからどんな劇団ハーベストを見せてくれるのか。だから、今から、やっぱりすごく楽しみです。心から期待しています!

 

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