それを俺は書こうとしているのだ(けれどずっと書けていなかった)。
8月末ごろに、この邦題が酷い!みたいな感じで話題になって、そのちょっと後ぐらいに「愛の不時着」を見終わった自分は、次に見るドラマを探していたのでした。
や、普通は「梨泰院クラス」に行くと思うんですけど、なんとなく、その酷い邦題「元カレは天才詐欺師(はぁと)」こと「38師機動隊」を見てみたら、やー、ハマったんですよね。
DVDの予告編ありますけど、ひどいっちゃーひどいけど、まぁ合ってるっちゃー合ってるw
2017年8月2日(水)発売! 韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師♡ ~38師機動隊~」DVD予告篇
ともかく魅力的なおっさんたち!そして(大体)みんなマブリーが好き!
このドラマ、これまでほとんど韓国の連続ドラマを見てない人でも、一度見てほしいと思うんですよ。
BSフジの人物相関図にリンクしておきますが、実はほとんど登場人物は、良い年したおっさん。
いろんなところで言われてるけど、ヒロインのスヨンと詐欺師のジョンドの恋愛関係は、ほっとんど話の中に出てこないんです。ちょっとだけあるけど、スパイス程度。
や、むしろ、詐欺師のジョンドと主人公のソンイル(=マ・ドンソクakaマブリー)のバディものというか、二人の恋物語という気すらしてくる。
2人がくっついたり離れたり、そして段々関係が出来ていく、というのが、ストーリーの一つの軸になっているわけです。
ヒロインのスヨンだって、マブリーが大好きだし、市長も2課のカン課長も、基本的にマブリー大好きなんだよな。
そのマブリーが、じゃあすごいヒーロー然としたキャラかっていうと全然そんなことはないんです。
筋骨隆々、張り手一つでKOの山を築くマブリーが、今作では気の小さな公務員なんですよ。すぐ謝るの。
それで、嫁さんにイビられ、娘のためを思って、へそくりで中古車を個人売買しようとして、詐欺に引っかかるという、もう、ホントね、中年男の哀愁なんですよ!
そんな哀愁マブリーは、税金徴収局の課長さんで、高額滞納者のところに税金を徴収に行くんだけど、まぁすぐに払ってくれるような人たちじゃないわけです。だからノルマが達成できないわけです。そうすると、局長からプレッシャーかかるんです。
ノルマ、達成できてないよね?やる気ないの?食欲はあるんだね。ジャジャン麺、ほら、食べて。みたいな。この、嫌味なアン局長。名キャラなんです。存在感すごいです。
で、まず徴収しようとターゲットにする高額滞納者の、マ・ジンソク社長という人がね、ともかく、オードリー春日にそっくりなのよ!アンジャッシュ児嶋という説もありますが。この人がねー、ホントに嫌味たっぷり!素晴らしいくらいイヤーな成金を演じてくれるわけです。これも名キャラ。
しかも、個人的に一番嬉しかったのが、「愛の不時着」で、抜群の悪役、北朝鮮のチョ・チョルガンを演じたオ・マンソクが、マブリーの親友であるワイルド刑事トクペとして2話から登場するんですよ。
1話の予告編で出てきたとき、自分はうわーー!!ってなりました。や、カッコいいんだこの人。チョルガンの時に感じた野性味はありつつも、基本的に漢気のある強力刑事を演じるので、めっちゃめちゃカッコイイです。「愛の不時着」見てたら絶対見たほうが良い。
スクショはすべて1話からなのですが、少しあとの話で、「愛の不時着」で、セリの小太り部下を演じていたコ・ギュピルが、ハッカーっていうか不憫キャラのジャワンとして登場します。彼もイイ味出してます。
二転三転する騙し合いは、まるで「ジョジョの奇妙な冒険」のバトル!
何度も言いますがこのドラマ、ラブコメ要素よりも、コン・ゲーム、騙し合いゲームの要素が非常に強いんです。
個人的には、見ながら、これもう「ジョジョ」のバトルじゃん!って思ったんですよ。
たとえば、戦況が味方側に傾くと、絶対に、その裏をかいて敵側に傾くじゃないですか。で、危機一髪で、張ってあった伏線が作動して、主人公側が勝利する、みたいな。
で、「38師機動隊」は、その主人公側の勝利と見せかけて、いやいやゲームはまだ敵の手中にあるのだ!みたいなところで次回に続く!となって、ホント目が離せない。
後半とか、いろんな勢力の思惑が絡みまくって、これはこれでどうなったら勝てるの?いや、もう勝利とかないの?なんなの?え、えー!!!みたいな感じで、混乱しながらも、伏線回収の見事さに感嘆する…みたいな、そういう気持ちよさがあります。
頭を使わずに気楽に見れるラブコメだと思って見始めた人は、ちょっとしんどいかもしれないです。
ともかく脳がフル回転して、ついていけな…や、そういうことか!みたいな、頭がぐるぐる回る楽しさのあるドラマだと思います。
全編に通底するテーマは、「パラサイト」同様、社会格差と不平等
この「38師機動隊」、要するに、高額税金滞納者に、詐欺の手口で滞納額を払い込ませるという非公式チームなんですが、何度も「庶民は税金を搾り取られ、富裕層は見逃されている」という内容が繰り返されます。
持たぬもの、持てぬものの悔しさ、怒りが、不正を行っているものの傲慢を打ち砕くという、全体の流れなのですが、このテーマ、「パラサイト」と一緒だよなぁと思いながら見ておりました。まあ「パラサイト」はもっと悲劇的な喜劇ですけれども。
途中で出てくる邸宅への侵入シーンが、ほとんどパラサイトじゃん!って思ったんですが、実はこっちのドラマの方が先に作られてるんですよね。パクリとかじゃなく、金持ちはこういう家に住んでるっていう共通イメージがあるんだろうなーと思いました。
で、細かいところが、ここ最近の韓国の状況を表しているんだろうな、というのも感じました。学歴社会、貧富の格差、建築会社絡みの汚職、チャイナバブルへの投資などなど、挙げて行ったらキリがない。
ドラマなので、ほんの一部を戯画化しているだけなのでしょうが、それでも興味深かったし、これは日本でも起きてる/起きてたことだよなーっていうのも、見ながらいろいろ考えました。投票は金で買えると言いながらも、でも何が起こるか分からない、というのも、投票に一筋の光明を見出しているんだなぁと感じました。
「38師機動隊」を見ながら、PRODUCE101問題も考えた
で、ここからは、なんというか妄想度合いが強くなるんですけど、このドラマ、「愛の不時着」同様、STUDIO DRAGONの制作なんです。このSTUDIO DRAGONって、CJ ENMのドラマ制作部なんですね。
同社は2016年5月に設立された歴史の浅い会社だが、実は韓国の大手企業CJグループの子会社「CJ ENM」のドラマ事業部門が物的分割された、CJ ENMの子会社でもある。
CJ ENMは現在、オーディション番組『PRODUCE』シリーズで知られる「Mnet」や、『名探偵コナン』を放映する「Tooniverse」など、多数のケーブルチャンネルを運営しているが、中でもドラマとバラエティに特化した「tvN」はコンテンツの質と視聴率で地上波を圧倒している。
上記のドラマも、ほとんどが「tvN」で放送された。つまり、tvNとスタジオドラゴンはCJ ENMを母体としながら相互協力関係にあるというわけだ。
莫大な資金力のもと、優れたコンテンツ制作の力量と実績を重ねてきたスタジオドラゴン。2017年11月に韓国KOSDAQ市場に上場し、現在はドラマ制作会社4社を傘下に置く韓国最大手コンテンツ制作会社になっている。
このSTUDIO DRAGONが設立された2016年に、大手芸能事務所SMエンタの子会社であるSM Culture & Contentsと手を組んで制作されたのが、「38師機動隊」なんですよ。めちゃめちゃ気合が入ってるし、結果も残している。
元カレは天才詐欺師~38師機動隊~」がケーブルのオンエアの視聴率で1位を獲得した。
31日、視聴率調査会社ニールセン・コリアによると、30日に韓国で放送されたOCN金土ドラマ「元カレは天才詐欺師~38師機動隊~」第14話が、4.386%の視聴率を記録し、全話の3.794%より0.592ポイント上昇した。
これは、第12話に記録した自己最高視聴率4.468%に近い数値であり、2話ぶりに4%台に復帰したものだ。すでにOCNチャンネルの過去最高視聴率を塗り替えた「元カレは天才詐欺師~38師機動隊~」は、土曜日に放送されたケーブル全体のオンエア番組の中で「グッドワイフ」など、ライバル放送局であるtvNの番組を全て抑えて1位を獲得。放送終了まで2話を残しているだけに、5%を超えるか注目を集めている。
富裕層へ社会的正義の鉄槌を下す、アウトローな詐欺集団!なんていうドラマを作っていたCJ ENMが、同時進行で、「結果は完全に視聴者の手にゆだねられます!」という建前で、談合しながらオーディション番組を制作しているという…。
や、日本だったら、そんなの当たり前じゃん!で終わる話だと思うんですよ、きっと。作り物なんだから、やらせだなんて野暮なこと言いっこなし、子どもみたいなこと言ってないでよ、ってことになったんじゃないかと思うんです。
でも、なんというか、「38師機動隊」を見ていて、「社会正義」を求める、なんというか純粋な心が、ものすごく残ってるんじゃないか?って思ったんですね。
PRODUCE101シリーズ自体、格差の是正みたいなテーマもあったじゃないですか。大手事務所に所属する練習生しか、有名グループには所属できない。でも、実力のある練習生だっているぞ!苦労してきた練習生もいるぞ!って。
事務所の規模に関係なく、業界のしがらみにもとらわれず、純粋に能力と適性を見極めた、国民全員の投票によってメンバーが決まります!そういう建前だったじゃないですか。
その建前だったのに、結局談合だった。先に話を回しておける、政治力のある事務所の練習生が選ばれていた。「話が違うじゃないか!」となりますよね。そうじゃない、というところが、魅力だったわけだし、そのように打ち出していたわけだから。
そういう意味で、PRODUCE101シリーズは、ある意味で自らの建前につぶされた、と言えるのかもしれません。「社会正義」を行う側のような顔をして、不正を行っていたわけだから。
さらに想像したのは、「真相究明委員会」の人たち、法の下で真相が明らかになっていくことに、ものすごく爽快感を覚えたんじゃないかなぁということでした。ドラマでやってるような、ものすごい分かりやすい汚職を、自分たちの告発がきっかけで明らかになっていったわけだから。
そして、IZ*ONEが今まだ活動出来ているのも、「社会正義」を求める力がすごく強いからかもしれない、というのも、考えていました。
一回ケチがついたら、まぁもう興ざめだよね、でファンも離れて解散を余儀なくされる、というのもありえたと思うんですよ。実際に、結成直後に問題が明るみになったX1は、練習生の所属事務所の判断で解散になったわけだし。
でも、IZ*ONEは、「大人たちが結果を決めていたとしても、それを知らずに努力していたメンバーたちが不利益を蒙るのはおかしい」ということで、解散せずにすんだわけです。
理屈が通ってると思うんです。で、その理屈が通るというのが、「社会正義」を求める声の強さが故、なのかもしれないと思ったんですよね。
まぁその「社会正義」が絶対正義か、というと、またそれは別の問題になってくると思うのですが。
そんなこんなで、いろんなことを考えさせてくれる、「38師機動隊」ですが、まぁともかく、ホント面白いので見ましょう。自分はNetflixで見ましたが、Abemaでも見れるみたいです。ということは無料で見れるんだよね?
余談 このピンク邦題は誰がつけたか?
たぶんですけど、日本で初放送したのがMnetだったので、MnetJapanさんがつけたんじゃないかなーと思います。CJつながりだし。
このたび、CJ E&M Japan 株式会社が運営する韓国100%エンターテインメントチャンネルMnetでは、ソ・イングク主演最新作、マ・ドンソク、スヨン(少女時代)共演ドラマ「元カレは天才詐欺師♡~38師機動隊~」を9月より日本初放送することが決定いたしました
や、この邦題、ちゃんとドラマを見てないと、ジョンドが元カレだってことがわからないし、そもそもこの内容でヒロインのスヨンを主体にして、「元カレは…」ていう邦題にしようと考えるのは、スヨンが少女時代のメンバーで日本でもある程度名前が知られている、ということを把握していないとあり得ない発想だと思うんですよね。
ただ、このタイプの邦題が多すぎて、逆に新しい視聴者が入りにくくなっているのは確かなんで、これからだんだん変わっていったらいいなーと思います!
ちなみに今、鈴木は「秘密の森」見始めました!これも面白い!アラフォーのペドゥナがかわいいっつか、相当に市川実日子です!